エリート上司に翻弄されてます!
その日、乾先輩は帰ってくるとまた心配そうに私を見つめた。
「深桜ちゃん大丈夫?あんまり調子よくないみたいだけど」
「大丈夫ですよ、先輩のお陰で健康的な生活はさせてもらってますし」
「そりゃあな!けど俺の風邪が移ったんじゃないかって心配なんだよ」
「……」
大丈夫ですよ、ともう一度強く言えば彼は納得したように頷いた。
「あと深桜ちゃん、今日の……」
「あ、先輩!お風呂沸いてるんで先入ってもらっていいですか?」
「……あぁ」
そうする、と彼が頷くのを見て「ジャケットもらいますね」と彼の肩に手を伸ばした。
脱衣所へと消えていった彼を見送ると私は深く溜息を吐く。
やっぱりあの時のこと不思議に思ってるよなぁ。
私らしくなかったし、何よりも桐乃さんに凄く失礼だった。
もしかしたら乾先輩は怒っているのではないかと心配だったけど。
「(どうしてこう、普通になれないんだろう)」
いつも通りってこんなに難しかったっけ。
まだ家の中の方が普通に話せている気がしてきた。
私は彼のジャケットをハンガーに掛けようとリビングへと向かった。
その瞬間、何やら甘い匂いが鼻をくすぐる。
今日の夕ご飯の香りじゃない。
甘い、香水の匂い。