エリート上司に翻弄されてます!




なのに今あの2人は電話をしている。


「(胸が、苦しい……)」


早くここを離れないと駄目だと告げているのに私の体は動かない。
彼の姿から目を離すことができないのだ。

乾先輩は「そうだね」とスマホを持つ手を入れ替えた。


「あー、うん……またその時は連絡するし……いいよ、何?」

「……」

「……」


乾先輩はそれを言ったっきり黙り込んでしまった。
向こうの話を聞いている風にも見える。

彼の顔が不安げに歪む。
さっき私に見せてくれた時とはまた違った顔だった。

彼は日高さんを話す時は笑っていた。

するとようやく口を開いたかと思えば、彼の口から発せられたのは意外な言葉だった。


「……泣くなよ」


桐乃さんが電話越しで泣いていた。

どうして彼女が乾先輩に泣きついているんだろう。
嫌な憶測ばかりが頭の中を支配する。

何度も何度も、彼の優しい声が繰り返された。
その声だけでもう分かってしまう。

彼が今好きなのは……




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