エリート上司に翻弄されてます!
「あの、先輩ちょっといいですか?」
帰りが遅かった乾先輩がご飯を食べているところに行くとその向かいに腰を下ろす。
あれから私から話しかけるのは初めてだったからか、彼は驚いた表情をしていた。
「どうしたの、急に」
「……実は」
私はテーブルの下で指同士を絡めた。
「住んでたマンションのリフォームが終わったらしくて、向こうに戻ろうと思うんです」
「……」
さっきの管理人の話はマンションのリフォームが終わったという知らせだった。
『一応綾瀬さんの部屋は残してるからさ、いつでも戻ってきてよ』
そう言う管理人に私はその場で返事をした。
何処かで安心していた。これでこの家を出て行く理由が出来たから。
元々この状況は私が自分の部屋に住めなくなったから乾先輩の家に居候させてもらっていただけで、その原因が治ればここに住む理由はなくなるのだ。
今すぐにでもここを出て行きたかった私は今日彼にこのことを話そうと決めていた。
「数ヶ月間、お世話になりました」
「……そっか」
分かった、と言う乾先輩に私は胸がはち切れる思いだった。
ここに来た当初、私が何度か家を出て行こうとする度に彼は必死になって私のことを止めていた。