エリート上司に翻弄されてます!




首を傾げた彼に私は言おうとしていた言葉を失った。
何を今、言いかけようとしたんだろう。


「ありがとうございました。会社でもよろしくお願いします」

「ふっ、構わないさ。それよりもこの俺の同居できたという素晴らしい思い出をいつまでも忘れるなよ」

「このナルシストから解放されるって清々します」

「ひど!?」


大丈夫。この日が来るまで何度も練習した。
だから今日ここで彼を安心させられる笑顔が出来る。


「ではまた会社で」


そう笑うと彼も安心したように「うん」と頷いた。
彼が車に乗るまでを見送ると空がオレンジ色に輝いているのが分かった。


「じゃあね、深桜ちゃん」

「はい」


きっと「深桜ちゃん」も今日が最後だ。
最後まで笑っていると彼はマンションの駐車場から出て行った。

忘れるんだ、もうこの気持ちとはおさらばするんだ。
新しく踏み出すことが私のためにも、そして乾先輩のためにもなる。

今、私がここにいて、何も後悔していない。


「(笑えて良かった)」


最後に残るのが泣き顔なんて、絶対嫌だもん。



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