そこには、君が






次の日の夕方。


家のチャイムが鳴った。


約束していた人。


きっと凛だ。







「明香ぁ〜!!!!!」






「凛、おかえり」







初めから泣いていた凛は、


私に抱きつくとワンワンと子どものように


更に大泣きした。


よしよし、と宥めながら、


部屋の中へと招く。







「どうだった?」






「ちゃんと、別れて、きたぁ…」







泣きながらも、春太さんとのことを、


必死に伝えてくれた。


凛のことを思って言ってくれているのが、


とても伝わったと言う。


それだけ真剣に想い合っていたということ。






「後悔ない?」






「少しもって言ったら嘘になるけど、でもちゃんと話し合ったし、もう大丈夫!」







涙を拭きながら笑おうとする凛。


きっとこのまま時間が解決するはず。








「もう今日はやけ食いしよう!」






「え、うん!そうしよう!嬉しい!」






私はすかさず大和に連絡することに。


3コールで出た大和と、


そこにいた京也に、


即集合をかけた。


待ってましたと言わんばかりに、


すぐに行くと言った5分後に


家のドアが開いた。


手には用意していたのか、


少し冷めたピザやチキンがあって、


冷えたジュースが何本もあった。







「凛ちゃん、この調子だと大丈夫そうだね」






「だと思うんだけど。ちゃんと話し合ったみたいだし」






笑い疲れた凛は、


いつの間にか京也の肩で眠っていた。


京也はずっと肩に手を回し、


優しくさすってくれている。







「お前、チャンスだろ」






「え、俺?」






目の前にいる大和がそう言うと、


すぐに理解したのか京也は少し


頬を緩ませた。


何のことか分からない私は、


ポカンと2人の顔を眺める。








「こいつ、実はさ…」






「おい大和!それは、」






抵抗しようにも隣にいる凛を


起こすまいと、微動だに出来ない京也。


そんな状況を楽しむように、


大和は私に耳打ちした。








「京也、実は凛のこと好きだった時があんだよ」






「…えっ!!!嘘…」





全然知らなかった事実に、


私は驚きを隠せない。


でも、そうなったら、


面白いかも。


4人でたくさん遊びに行けるし、


京也なら絶対凛を幸せにしてくれる。







「凛も心機一転。京也とも仲良いだろ」






「それがいい。うん、京也。凛のこと、任せるね」






「は、ちょっとお前ら勝手に…」






京也が声を上げると、


凛が少し意識が戻ったのか、


うーんと唸り声を出す。


凛が幸せになるのも、


京也が嬉しそうなのも、


全部全部私の幸せだ。


いずれそうなる未来を想像しながら、


私たちは笑った夜を過ごした。


絶対幸せになってみせる。


私たちみんな、


笑顔あふれる人生を送ってやるんだ。







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