白鷺の剣~ハクロノツルギ~
その時ガタンと戸口が鳴って、以蔵さんがユラリと姿を現した。

ああ、やっと帰ってきた!

「以蔵さん……良かった」

私はホッとして以蔵さんに駆け寄ると、彼を見上げて息をついた。

「熱はもう出なかった?」

すると彼は私の髪を撫でて屈むと、額に口付けた。

へっ?!

私が驚いて見上げると、以蔵さんは少し決まり悪そうに咳払いをして、手に持っていた篭を私に手渡した。

「卵を茹でてくれ。今すぐ食いたい」

「う、うん」

何だか気まずくて、私は炊事場へと足を向けた。

……悪い事をしているような気持ちになってしまって。

私は白鷺が好きなのに、白鷺以外の男の人とこんな風にひとつ屋根の下にいて。

しかも、他人の家に不法侵入だしな!

部屋に上がった以蔵さんをチラリと盗み見すると、私に背を向けて胡座をかき、何やら半紙みたいな薄い紙を広げて眼を通しているところだった。

今夜、お願いしてみよう。

白鷺の刀『白鷺一翔』を返してって。

◇◇◇◇◇◇◇

「お注ぎします」

私がそう言いながらお酒を手に取ると、以蔵さんは静かに私を見つめた。

日がすっかり落ちて、行灯の炎が頼りなく揺れている。
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