白鷺の剣~ハクロノツルギ~
そんな中、以蔵さんは私を見て一瞬唇を引き結び、腕を伸ばして杯を差し出した。

それから溜め息と共に私に告げる。

「……刀は渡さない」

……うっ……先読みされた挙げ句、拒否されたし。

静かにそう言って杯を傾けた以蔵さんは、私から視線をそらした。

「お前は、もうすぐ今の幕府が終わり、俺は新しい時代を見ることなく命を落とすと言ったな」

ギクリとした。

「そ、れは……」

どうしよう。

白鷺一翔を奪われそうになって、この人が幕末の人斬りだと予感した時、私は確かにそう言ってしまった。

「……無責任なことを言ってごめんなさい。あれは……嘘です。ただ、自分を大切にして欲しいのは本当で……」

その時、ガタンと激しい物音が響き、私は驚いて戸口を振り返った。

見るとそこには二人の男性が刀を抜いて立っていて、彼らはこちらを睨み付けて言い放った。

「土佐勤王党の岡田以蔵か?!」

既に立ち上がり、白鷺一翔を抜き放った以蔵さんは、グイッと手の甲で唇を拭ってから答えた。

「だったらなんだ」

「死んでもらうっ!」

二人のうちの一人が叫び、以蔵さんが私を背中にかばった。

月のような冷たい眼差しが、一瞬だけ温かく私を捉える。
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