白鷺の剣~ハクロノツルギ~
彼のしたことは許されない事なのに、私は弥一さんを可哀想に思った。

「悔いているのだ……」

「……弥一さん……」

……劣等感なら、理解できる。

私もそうだったから。


『あなたはどうしてそんななの?』

『なんでお兄ちゃんみたいに出来ないの?』


いつも私は、先生を含めた周りの大人達から兄と比べられていたから。

イケメンで勉強も出来た兄は私の自慢だったけれど、辛くなかったかと言えば嘘になる。


私は暗い空間を見つめたまま、唇を噛み締めた。

……助けてあげたい。

だって彼は亡くなったんだもの。

もう自由になってもいいんじゃないかって思った。

「死して悔いるなど……生前は思ってもみなかった」

「弥一さん」

私は決心して身を正した。

「私、西山白鷺が好きなんです。彼には恋人がいて……叶わない想いですけど」

自分を奮い起たせるように、私は大きく息を吸い込んだ。

「白鷺は、自分の生み出した刀が妖刀になってしまった事に苦しんでいます。
私はそんな白鷺を助けたい。
それはおのずと弥一さんを助けることにも繋がるのだと思います。
……だから安心してください。私があなたを助けます」
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