白鷺の剣~ハクロノツルギ~
正直に言われたら出ていかなきゃならないし、路頭に迷う。

でも、これ以上迷惑はかけたくない。

ギュッと両手を胸の前で組んで、私は覚悟を決めた。

「思ってる事、隠さないでちゃんと言ってよ。私はその……ここでの暮らしに馴れてないけど、悪い所は直すから」

私がそう言うと、白鷺は黒い瞳で私をジッと見つめて、ゆっくりと手を伸ばした。

それから、少しだけ笑った。

「手を繋いでやるから早く来い」

「……うん……」

白鷺は私に、胸にある思いを打ち明ける気はないのだ。

白鷺と私の間には、取り払われない壁があるのをヒシヒシと実感して寂しかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

思いの外、街は賑わっていた。

多分だけど休みながら二時間以上歩いて、白鷺と辿り着いたそこは、私の住む21世紀の面影はなかった。

けれど、私の生きていた時代よりも高い建物が極端になかったから、城が綺麗に見えた。

城の角度や見える大きさから、現在地の地名が大まかにだけど理解できる。

ああ、昔の城はこんな感じなのか。

私がいた世界よりは、男性的な感じがした。

きっと城の周辺には武家屋敷がズラリと並んでいるのだろう。

城が見えた瞬間、なんとも言えない気持ちが胸に込み上げる。

「柚菜?」

「はい」

けどそれを知られたくなくて、私はフワリと笑った。
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