白鷺の剣~ハクロノツルギ~
帰りたいかと訊かれるのが怖かった。

「白鷺、何から買うの?」

私は自分が呼ばれたのに、先に質問をした。

白鷺はそんな私を少し眉を上げて見ていたけど、

「先に茶屋町に寄ろう。長く歩いて疲れただろう」

そう言って再び私の手を引いた。

◇◇◇◇◇◇◇

沢山の露店商や、品物を売り歩く人々を見るのは本当に楽しくて飽きなかった。

「俺は細々した物を買わなきゃならないから、柚菜はここで色んな店を見ていていい。あとで迎えに来る。欲しいものが見つかったら買ってやるから。あまり遠くへは行くなよ」

白鷺はそう言うと、私を置いて店がひしめく狭い通路へと消えていった。

◇◇◇◇◇◇◇◇

どれくらい経ったのかはわからないけれど、私は辺りの店を十分堪能した。

たまにお店の人が、

「あんた、変わった髪をしてるねぇ!異人かい?」

「いいえ。これはね、染めているんですよ」

「へえ!洒落てるねえ!これ、持ってお行き」

女将さんはニコニコと笑うと、私に笹でくるんだお団子をくれた。

「ありがとう!今度必ず買いにきます!」

「待ってるよ」

私は女将さんに手を振ると、白鷺が向かった道の方をジッと見つめる。

背が高くて短髪の白鷺はよく目立つ。
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