そこにいた
先生は仕事に戻った。私は部屋に行くふりして、ここに来た。
ここなら一人になれる。
選んだのは入院病棟とは違う棟の二階。
何か異様な雰囲気はあるけど、扉に何の部屋なのか書いてある訳でもなく。
ソファがところどころに並んで置かれて、他には自販機しかない。
誰もいない……。
その中でも一番死角になるソファに座ってみた。
座ったそのソファには、窓から暖かな光が降り注いでいる。
閉じられた扉の奥には、どんな部屋があって、どんな人がいるのかわからないけど、誰もいないことが一番気に入った。