かわいいあなたにマフラーを
「あ、チャイム……」

秋穂の声に、俺は名残惜しいと思いながらも彼女から体を離した。

この空き教室は、1時限目に他のクラスが使うことを知っている。
出なければならない。

「秋穂、教室に行こう」

「う、うん。
わたし、ホームルームだけでもサボったの、初めて……。
変な目で、見られない?」

「俺も初めてだけど……。
ま、大丈夫だろう」

大人しくて真面目な秋穂と、生徒会副会長で学級委員長の俺。
授業どころかホームルームでさえ、サボったことはこれまで一度もない。

それでも、有意義な時間だった。
秋穂が何を考えていたのか、何があったのか知れて、わだかまりも消えた。
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