かわいいあなたにマフラーを
「こーゆーの、しすこんってゆーんだぜ!
俺、知ってる!
春樹は秋穂が大好きだもんな!」

静まりかえりそうになったリビングに響いたのは、律君の声だった。
張り詰めかけた空気が変わって、穏やかになったのが分かる。

「おいバカ律!
言ってんじゃねぇぞ?!」

「わぁ~! 春樹が来る~!」

春樹君と律君は何だかんだとじゃれあい始めた。

「こら! 律も、年上にはちゃんと、さん、を付けるように言ってあるでしょ?!」

律君母の声が聞こえるが、律君は知らんぷりだ。
春樹君と律君は、似てるところがあるのかも知れない。

「ご、ごめんね、真冬君。
春樹ったら心配性で……」

済まなそうな顔をする秋穂の頭を撫でる。

「全然。家族の仲が良いのは、いいことだ」

それに、彼が言ってたことは確かにそうだし……。
俺は、いかに自分が身勝手だったのかを彼から教えてもらった。

秋穂を大切にする気持ちをもっていたつもりだったけど、それはまだまだ足りない、独りよがりなものだったんだ。

秋穂を大切にしなくちゃ。
これまで以上に、ちゃんと。
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