囚われた瞳【琴子さんanother story】番外編2UP
「ねえ、荻野君は、人物は撮らないの?」

何気ない疑問だった。新人賞を取った写真は、どこにでもある日常の風景だ。

何枚も素晴らしい写真を撮ってる彼の、人物を撮った写真を見たことがない。

彼が人物を撮ったら、その人の内面の素敵な部分を引き出し、きっといい写真を撮るはずだ。

なのに…

「ん?動くものは無理ですよ?俺、撮るのにすごく時間かかるから」

時間かかる…か、さっきから、サクサクと撮ってる荻野君。明らかに嘘だろう。

いつもどおり、明るく返してくれてるけど、彼の指先が小さく震えている。

失言だ…『人物は撮らないの?』なんて、聞いちゃいけないんだ。

もしも、私が荻野君の恋人なら、震える彼の手を握ることが出来るのかもしれない。

でも、彼にとって、私は仕事の相手。

踏み込むべきじゃない。

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