強引上司と過保護な社内恋愛!?
―――其れから直ぐに桧山さんは激務に突入する。

取引先の引継をするために出張や外出で終日不在にすることが多くなった。

当然ながら「飲みに行きましょう」なんて誘える隙もない。

焦燥感に駆られながらも時間だけが刻一刻過ぎて行く。


朝一番に出社すると会議室から明かりが漏れていた。

誰かが電気が消し忘れたのかな。

コートを羽織ったまま会議室を覗き込むと、パソコンの前に突っ伏している人の姿があった。

顔を見なくたって後ろ姿だけで誰だか直ぐに解る。

私は足音を立てないよう近かづいていく。

桧山さんが資料とマニュアルに埋もれて、死んだように眠っていた。

昨日は会社に泊まり込んだようだ。

可愛い寝顔ももう見納めか。

そう思うと胸がギュッと締め付けられたように苦しくなった。

「遠くなんかに行かないでよ」

未練がましい台詞が口をついて出た。

熟睡している桧山さんの耳に届くはずなんてないけど。

私は首に巻いていたスモーキーブルーのストールを外し、フンワリと桧山さんに掛けてやる。

起こさないようドアを静かに閉めて私は会議室を後にした。
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