天気職人
「まずこれをパレットに出して」

そういいながら俺は透明の液体が入った瓶を渡した。


「? これはなぁに?」

「これは原液を薄めたり、色を混ぜ合わすためのものだ、油絵で言うところの油だな」


「へぇー....」

ちゃんと聞いていたのかわからないような返事をしてソラは言われた通りにパレットに出していった。


「あとはこの青の原液、好きな濃さに薄めていく、出来るか?」

「えぇ」


慎重に、慎重に原液を混ぜるソラの姿はまるで弟子入りして初めて天気を作らせてもらった時の自分みたいだ、と雅美は考えていた



先代のじじいもこんな気持ちだったのか。



「───雅美、出来たわ」

「ん、どれどれ?....上出来」

雅美はにっと笑ってソラの頭を撫でた。

「じゃ、これを移すだけだな」

「移す?」


「そう、この色を空に移すんだ。」

「あぁ!最初に出会った時のやつね!!」

ソラは嬉しそうに言った。

「そうそう、やってみな」

「やったぁ!ありがとう!!」


ソラは窓辺にかけより空を見上げた

雅美が見たソラの横顔は悲しそうだった。

「ソラ....」

「なぁに?」


雅美に名前を呼ばれはっとしたようにいつもの顔を取り戻すソラ。

「や、なんでも....」

「そう」


ソラは雅美に微笑みながら空をもう一度見て天気を空に移した。

「わぁ....っ」

やはり近くで見ると一層綺麗だった。



しばらく二人で空を見上げていた。すると突然ソラが口を開いた

「雅美、あのね....あたし、明日死ぬのよ」

「え....」


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