without you
この時が来るのが分かっていたから、なるべく誰とも関わらないようにしてきた。
仲の良い友だちも作らず、社内では極力目立たないよう心がけて。

それでいいと思ってた。
いつか終わりが来るんだから、そのくらいの距離でちょうどいいんだと、自分に言い聞かせていた・・・。

「あみ・・木戸。どうした。顔色悪いぞ」
「・・・いえ、べつに」
「通勤ラッシュに酔ったんだそうです。社長部屋のベッドで寝かせた方がいいんじゃないですか?」
「ああ、そうだな。ひとまず中に入れ。歩けるか?」
「もう大丈夫です。ホントに。立川さんも、わざわざついてきてくれてありがとう。私は大丈夫だから、仕事に行って」

この5年の間に、私を少しでも気遣ってくれる人が、大切な人が、できた。
居場所もなくなった。行くあてもない。
だけど私には、もう一つ、居場所があったんだ。

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