without you
「おまえのスマホ、壊れたんじゃな・・・」
「・・て。ま、って。待って!!」
「あみか?今どこにいる」
「う、うしろ・・」
「車止めて」という社長の声が、スマホの向こうから聞こえた。

よ、よかった・・・。

間に合った安堵感から、その場に立ち止まった私は、体を屈めて、ハァハァ言ってる息を、ひとまず整えた。
そうしたのは、ほんの5秒くらいの時間だったと思う。
でもその間に、社長の車がバックした状態で、私のすぐ近くまで来てくれた。

ドアが開いたバンという音とともに、久遠社長が後部座席から降りてきた。

社長は、「あみかっ!おいっ、大丈夫か?」と優しく聞きながら、私の二の腕あたりにそっと手を置いてくれた。
もし、私がその場に倒れそうになったら、すぐ支える準備をしているかのように。
その気持ちが嬉しくて、すぐそばにいるこの人にすがりたくて。
私はうつむいたまま、社長が着ているワイシャツの胸元あたりを、右手でギュッと握りしめた。

< 515 / 636 >

この作品をシェア

pagetop