without you
私を背後から抱きしめている純世さんの逞しい腕に、私がそっと手を置くと、彼は私のこめかみあたりに、そっとキスしてくれた。

「朝ごはん、食べませんか。私、おなかすきました」
「あぁそーだな。俺も腹減った」
「純世さんは何が食べたいですか」
「おまえが作ったもんなら何でもいい。最高に美味いから」
「じゃあ・・・さっき冷蔵庫の中を見たら、たまごとトマトがいっぱいあったから、トーストとオムレツでいいですか?」
「全然オッケー!たまご3つで頼むぜ!」
「分かりました」

・・・純世さん。
もし、私の人生最後の日まで、あなたにごはんを作ることができて、私の人生最後の日まで、あなたが「うまい!」って言いながら、食べてくれる姿を見ることができたら。
「私の人生は最高に幸せだった」って言いきれます。

私は、たまごをボウルに割り入れながら、退職届を出し損ねてしまったと、今更のように思ってしまった。
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