怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「いいか、深く考えるな。みんな見慣れないからあれこれ言うんだ。
それもすぐ落ち着く。気分が落ちるなら逃げろ」
瑛太の言葉にゆっくりと頷く。
「泣きたくなったら柊哉に合図しろ。俺が迎えに行ってやっから」
もう一度美祈はゆっくりと頷いた。
そして美祈の耳元でコソコソっと瑛太が囁きはじめ
驚いた顔をした後で、またゆっくりと頷いた。
柊哉はそれが何かは聞かなかった。
きっと瑛太だから言ってあげられる事なんだろう。
美祈が頷いたのも、瑛太の言葉だからだろうと黙って見守った。
「よし、今日は2人で出勤だ。瑛太見送れ」
「おぅ。いってらっしゃい」
やけに大きな声
そして大きく振る手
瑛太に見守られながら自分への1歩を踏み出した。
電車の車内でつり革につかまりながら
「ドキドキしてきた」
そう言って柊哉の顔を見上げる美祈の粒良な瞳に
「芹沢、座敷童じゃないお前に俺もドキドキだ」
「え?あはは」
「しかしお前、可愛い顔してるよなぁ」
「有難うございます」
「だが、俺は絶対的に座敷童派だから」
「あははは」
柊哉もまた美祈の気分を盛り上げ上手。
上司というもの部下を思うように動かすのも手腕のひとつ。
だが、それに素直さを持った美祈は動かす方も楽しさがある。
「瑛太のヒゲについて触れる余裕もなかったな」
「あ!そうですよね。全然なかった…」
「でもな、瑛太を知ってるから瑛太って思うわけでヒゲがあろうがなかろうが脳が瑛太を認識してんだよ。芹沢も同じだ」
「はい」