怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
俺の横から走り出し無邪気に
「ありがとう」
瑛太に飛びつき抱き付く姿には、ちょっと涙が滲みそうだった。
何、あれだよ。
瑛太があのメガネをかける日が近いって同情で。
左手で美祈を抱きしめ
サンキューの言葉の代わりに右手をあげるその手に柊哉もパチンとタッチして一足先に通り過ぎた。
「頑張ってきたか」
「うんうん」
「目立ってきたか」
「うんうん」
「俺がイケメンって評判になったか」
「うんうん」
あはははと笑いながら美祈の頭をクシャクシャと撫でるのは、恋人としてよりこちらももう父親感覚かもしれない。
飛びついて抱き付いた美祈も、恋人に抱き付く恋慕というより
有難うともっともっと純粋な思いだろう。
「もじゃもじゃに出会えて良かった」
大きな瞳に涙を浮かべながら有難うって何度も何度もつぶやく姿に
ありがとうって瑛太も呟いた。
美祈と出会い瑛太も自分の中に今までにない感情がわいた。
護ってやりたいという気持ちだけではなく
もっとこう…心の軟らかい部分が増えたようなそんな感覚。
瑛太の顔を見上げ
「ヒゲがあってもヒゲがなくてもどっちも大好き」
「俺も座敷童でも、そのまんまでもどっちもスキだよ」
一応ここ公共の道路だからなって大人の瑛太は美祈に囁き
そこで慌てて我に返るのも、らしいといえば 美祈らしい。