怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「そこで気が済むまで写真撮れたらって思う。いや撮る。行けば1年よりもっと長くなる。何年も巡っていく季節にシャッターを切り続けると思う。くだらねぇと思うかもしれねぇし理解出来ねぇかもしれねぇけど、それって俺の夢なんだわ」
予想はしていた言葉だ。
瑛太さんの夢って聞いたらなおの事、いってらっしゃいと笑顔で送りださなきゃいけない。
「いつ戻ってくるか正直わかんねぇ」
「うん」
「それを待っててくれなんて俺、言えねぇんだわ」
美祈は別れを切り出されると思った瞬間、込み上げそうな涙を必死に堪えた。
「美祈」
「うん」
「会社辞めて着いてこいよ」
別れ話と思っていたから、何が何だかわからなくなった。
「…は?え?って…え?」
「俺と結婚して。一緒にフィンランドに行こう」
「け…け…結婚?私が?」
慌てふためく姿がおかしいのか、お前としなくて誰とするって言いながら
「もう一生絶対に大切にするから。俺と結婚して」
「手がかじかんでるよ」
飲み終わった缶をベンチに置くとハーッと自分の手を温めるように息をかけて
コートの下のジャケットのポケットから小さな小箱を取り出した。
開けた中にはダイヤのリング
「蓄えはそれなりにある。撮り続けるって言っても契約して撮るものもあるから収入がないわけじゃない。俺、結構稼ぐんだよ」
「今応えるのが無理だったら1ヵ月ちょいたったらアラスカから戻るから。それまで考えてくれ」
「あーだめだ。俺1ヵ月以上も超ナーバスになる。美祈、フィンランドに着いて来て。お願い」
来るまでの間、あんなにも無口だったのに、今はずっと喋り続けていて手まで合わせてお願いするなんて。
それが何だか可笑しいのと同時にホッとしてポロポロと堪えていた涙が零れ落ちてしまったけれどそれでも私は笑っていた。