怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
結婚の話しを聞いた翌日、瑛太の言う通り芹沢はマスクをとって出勤をした。
俺は、芹沢より早く出勤して、部長や人事にその旨を伝えた。
「まだ1年じゃないか」
「おめでたい事だが、残念だな」
会社にとっては、当然の反応。
仕事を覚えてこれからだって時だった。
「芹沢が結婚するそうだ。2ヵ月後にはフィンランドに行く事になり退職が決まった」
みんなの前で話す俺は娘を嫁にやるような気分。
「急で強引なプロポーズにマスクをとっていいなら結婚するって条件出したそうだ」
俺がマスクまで言っただけでもうみんな笑いだしていて
「可愛いから最後まで他のやつに見せたくなかったって事ですよね」
「すげぇ独占欲」
瑛太は何を言われても甘んじてうけるだろう。
スキなだけ言え。こいつは俺のもんだと大声で笑うだろう。
芹沢はありのままの自分で残りの2ヵ月間をみんなと接するといい。
「フィンランドに行くって何してる人?」
「カメラマンです」
「気に入らねぇ男だな。何だそのカッコいい職業」
部署の中は笑いとヤジでいっぱいだけれどみんな芹沢の幸せを喜んだ。
当の本人は、まさかこんなに早く辞めるなんて思ってもみなくて
なんかもう何が何だかよくわからないんですと本当に残念そうで、何なら結婚やめたら?って喉まで出かかった。
やっと仕事を覚えたとこで辞めるのか。
管理職としての意見を一度として芹沢に言えなかった。
その代わり有給の残りを数え、
後、何回出勤だ?なんて考える俺は、仕事の引継ぎって事よりやっぱり娘を嫁に出す気分だった。