怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


同じマンションに住んでる事を俺が気づいてないと思ってんだったな。


偶然帰りに同じ電車になり、駅からの道のりを話しながら帰った日の事。


「芹沢の家もこっちなの?うち、この先のコンビニを曲がったとこの白いマンション」


綺麗にお化粧をし、見るからに初々しさが溢れる新入社員の中で1人身を隠すようにいた彼女。


見かけはどうであれ仕事を頑張ろうという意欲が見られ会話のひとつひとつは誰よりも初々しさが感じられた。



マンションの場所を話した途端


「う…家は全然逆で、もっとずっと駅から遠くて課長の家と全然違うとこです」



そこまで必死になって言われると近所なのかなと思うもので、


どの辺?と意地悪く尋ねると


「あっちです。失礼します」


突然、方向返還して反対側へと猛スピードでかけて行った。



「図星だ」


いつか近所で遭遇する事を楽しみにしていたが、それ以降駅でも道でもコンビニですら出会わない。


同じ時間帯に同じ場所に出勤するのだから会う確率は高いはずだ。


それなのに出会わない。


自分より早く出勤している事がわかると面白さ半分意地半分でいつもより早く家を出て見た。


こうなったら見つけるまで早めてやると思うのはやはり意地だったのかもしれない。


見つけたからと言ってそこに何があるわけでもないとなると遊びか。





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