怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


「でも、すごく心配させちゃったから」

「おでこはどうなんだ。見てやっていいか」

まだ戸惑いが残る瑛太の声

美祈は、俯いていた顔を上げ額にかかった髪を手でよけながら

「うん」
微笑みを見せながら溢れては零れる涙。


「泣くな。そんなに痛いか?」

「ううん。大丈夫」


幸いにも傷も大したことなく出血も、もう止まっている。


「服は濡れてねぇか?」

「うん捲ってたから大丈夫」

「消毒はした方がいいから行くぞ」


クシャクシャと美祈の頭を撫でて瑛太が歩きだすと後ろを美祈も着いて行く。

美祈の歩く速さに合わせるように今度はゆっくり目に歩く瑛太。



「私ね…この顔ですっごい苦労してトラウマなんです」

背中から聞こえてきた美祈の言葉があまりに悲し気で

「そうか。話したいなら聞く。話したくないなら聞かねぇ」

振り返らず元きた道をゆっくりと戻る。



「話すと長いんだけど聞いてもらえますか?」

「あぁ。消毒したらいくらでも聞いてやるよ」

それから車までは無言だった。



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