怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


仕事が始まれば、大きな声が響き


パソコンを叩くキーボードの音、電話で話す声


コピー機が何枚もの印刷を繰り返す音



「課長これお願いします」


「課長、これ急ぎです」


デスクのトレーの中へ積み重なる書類の山。



「おい、これもっとちゃんと作れ!やり直し」


「読む方の身にもなれ」


ダメ出しが続く中で綺麗に仕分けされ付箋で印のつけられた書類。


作成者は見なくてもわかる。



「芹沢、これ経理にもって行って」


入社当初は小姑のように芹沢にもダメ出しの連続だった。


「仏の顔も3度までだ」


「はい」


小走りで自分のデスクへと戻るとすぐに作業を始め、コーヒーを飲みながら仕事をする人が多い中で彼女は休憩時間以外はまさに一心不乱で仕事に取り組む。



「芹沢の書類は、綺麗に整備されていて見やすい」


「有難うございます」


マスクで見えないが恐らくは少しはにかんだ表情なんだろう




< 9 / 241 >

この作品をシェア

pagetop