愛の歌、あるいは僕だけの星
『ていうか、銀也、蒼井君とずっと仕事してるくせにそんなことも知らなかったの?』
「そんな話しねえもん!」
ぱくぱくと口を動かして、必死に抗議すれば夏は呆れて溜息をついた。この距離だと、彼らが何を話しているのか聞くことは出来なかったけれど、穏やかな様子でないことは分かった。
「俺は、今のレンゲとはつき合えない。ごめん」
きっぱりと、蒼井が告げる。彼女は一瞬酷く傷ついた顔をして、ぎゅうと唇をかみしめる。そして、パシンと乾いた音が続けて鳴った。ばたばたと走り去る足音。がんっと乱暴に扉が閉まる音。
(嫌な場面に居合わせちゃったな……)
小さく溜息をついたそのときだった。
「……会長、いるんでしょう」
思わず「えっ!」と声を上げる。そっと首を伸ばせば、給水塔の下に申し訳なさそうな顔をした静香が、腰に手を当て銀也を見上げているのが見えた。