Butterfly
蒼佑さんの車が、薄暗い街道を気持ちのよいスピードで順調に進んで行く。

目的地の近くに来ると、「店の駐車場はないらしいから」と、わき道に入ったコインパーキングに車を止めた。

「はい、おつかれさま。到着だよー」

「うん、ありがとう」

彼がエンジンを切るのを見届けて、私は助手席のドアを開けた。

すると、ひんやりとした外の空気が、一気に車内に流れ込む。


(わ、やっぱり寒い・・・)


大きく身震いをして、私は道路に降り立った。

外気と車内の温度差は大きい。

手に持っていたマフラーを、ノーカラーコートの上からぐるりと首に巻きつけていると、車から降りた蒼佑さんが、「あっ」と言ってこめかみの辺りを手でかいた。

「ごめん、千穂ちゃん。今日、キレイなワンピース着てたよね。鉄板焼きなんて汚れそうだな・・・。違う日にすればよかったか・・・」

バイオリンコンサートだし・・・と、一応キレイめな格好をしてきた私。

コートの下は、ウエストの位置に黒いリボンがついている、茶色いウールのワンピース。

足元は、母に借りた黒いパンプスを履いていた。

「しまったなー・・・」

と言いながら、蒼佑さんは肩を落としてひとり反省。

私は「ううん」と首を振り、彼に笑顔で返事した。
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