Butterfly
どれくらいだろう。長い、長い沈黙があった。

もう少し、何か言おうかと、言うべきかとも考えた。

けれどそれ以上、どうしてもかける言葉が見つからなくて、私はただただ咲良の心が開くのを、願うように待っていた。

「・・・どうしましょう。やっぱ、二人だけにしてみましょうか」

重たくて暗い雰囲気の中、見かねた龍平さんが市谷さんに問いかける。

「そうだな・・・」と市谷さんは顎に手をやり、思案している様子を見せた。

「・・・あ、あの!」

顔を上げた咲良が、そんな空気を打ち破るように、市谷さんたちに向け声をあげた。

「大丈夫です」

小さいけれど、決意に満ちた声だった。

「話します。ちゃんと・・・聞かれたことに、正直に答えます・・・」

「咲良・・・」

彼女の声は震えていた。

精一杯の、咲良の決意。

心配な気持ちで見つめると、咲良は私に向き直り、弱弱しく微笑んだ。
 
「千穂ちゃんには本当に・・・申し訳なかったって思っていて・・・。

もう、絶対に会ってくれないだろうって・・・嫌われたって思っていたから・・・。

でも来てくれて・・・バイオリン聞きたいって言ってくれて・・・本当に嬉しかった。

ありがとう・・・。がんばって、刑事さんと話する」

「うん・・・」

「ありがとう」と私が言うと、彼女は首を横に振った。
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