Butterfly
その時、コンコン、とドアがノックされ、開いたドアの隙間からスーツの人影が見えた。


(あ・・・蒼佑さん)


「お話し中すいません。星の坂の万引きの件、無事に解決してきましたので・・・」

おずおずと入室した彼を、市谷さんは「ああ」と言って細めた目でじっと捉えた。

「わかった。こっちもちょうど終わったところだ」

「あ、そうですか」

間の抜けたような表情で、蒼佑さんが頷いた。

そして私と目が合うと、へへっと照れたように笑った。

「・・・なんだそのふざけた顔は」

「え!?い、いや、ふざけてないですよ!千穂ちゃんと目が合ったから・・・嬉しくて、ちょっと笑っただけです」

「それがふざけてるって言ってるんだ。話が終わっただけで、仕事中には変わりないだろ。もっと緊張感を持て」

蒼佑さんをピシリと叱る市谷さん。

その迫力に怯んだ彼は、「すみません・・・」と言いながら、そのままシュンと黙ってしまった。


(怒られてる・・・)


自分の彼氏が、上司に怒られている姿を見るのは、やっぱりちょっと複雑だけど。

その光景は、なぜだかとても微笑ましく見えて、なんだかちょっと不思議だった。
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