櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ







 *





 かつて神々の国に、一人の女神がいた



 イリスと言う名の虹の女神



 雨が降り、光を浴びて浮かびあがる虹の様に


 地から空に向かって伸びる七色の輝くそれの様に



 神と神


 神と人


 そして天と地と冥界



 それらすべてを繋ぐ伝令として空を駆けた美しく清らかな女神





 彼女の手には一輪の聖花が握られている


 虹の雫によって生まれたその花の名こそ、アイリス(Iris)と呼ばれ


 もう一つの名をイーリスと言う





 きっとルミアは願ったのだ



 孤独だった一人の獣にその名を与え、


 人や動物、この世界に生きるすべての命を持った者たちと彼が繋がることを



 そして彼は、その名に恥じぬ人生を歩む



 生まれ持った天性の才を生かして





 これからも彼は彼女の為に駆けるだろう





 左耳にその花を輝かせ


 彼女がいる限り、いつまでも






 *




 アイリス(イーリス)
 ――花言葉『希望』『愛のメッセージ』『信じる心』




 *





 fin.side by Iris
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