パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

「うん、するよ。ね、ついでにヘアメイクも一緒にやってもらわない?」

「えー? それはいいって」


さすがにそこまで便乗するわけにはいかない。
両手を振って遠慮する。


「二葉、結婚式はやらないつもりなんでしょう? それなら、今ここで疑似体験だけでもさ。私もひとりよりふたりのほうが楽しいし。ね?」

「でも……」


鏡の前に立つ私の手を取り、琴美がじっと見つめる。

琴美ときたらズルい。
そうやって私の心を揺さぶるのだから。
試着とはいえ、憧れのウエディングドレスを着てしまったら、テンションが上がるのは当然のこと。
それが女心というものだ。

せっかくだから、メイクもやってもらってもらおうかな。
そんな気分に簡単になってしまう。

しかも、スタッフまでさっき同様に「ぜひどうぞ」なんて言うのだから。
「それじゃ、お願いします」と頭を下げてしまった。

今度は、隣に併設されていたメイクルームらしき部屋の鏡の前に、琴美とふたりで並んで座る。

琴美は手に取って眺めるばかりで、未だに自分の服のまま。

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