わたしの意地悪な弟
 樹は他人行儀な笑みを浮かべた。

 わたしの中で樹に対して積もり積もった疑念が膨らみあがった。

 期待して裏切られるなら、最初からゼロになってしまったほうがいいという投げやりな気持ちが膨れ上がった。

「明日から、一緒に登下校しなくても構わないよ。行きは一人で行くし、わたしは利香と帰るよ」

「板橋先輩と? 別に姉さんが誰と登下校をしようが、俺は咎めないよ」

 わたしと半田君が一緒に登下校をするとでも思っているのだろうか。

 なぜ彼は半田君に拘り続けるのだろう。

 わたしのことなんてどうでもいいのにも関わらず。

 それにはっきりとことわったのに、彼にあれこれ半田君とのことを言われたくなかった。

「樹も人のこと言えないよね。佐々木さんとあれだけ遊びに行って、断ったんでしょう」

 彼は虚を突かれたようにわたしを見た。そして、冷たい視線を床に向けた。

「向こうから誘われたから」

「断る気ならあまり会わないほうが良かったと思うよ。向こうだって期待しちゃう」
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