わたしの意地悪な弟
 わたしたちは家を出ると短く息を吐いた。

 今日、樹とわたしと日和の三人で一緒に出た。

 お母さんはいつもわたしたちより遅く出る日和が一緒に出掛けたのを見て、「珍しいね」とだけ言っていた。

 本当は写真のことも言いたかったのか、目が何かを訴えていたが、お父さんがいる手前、言い出せなかったようだ。

 日和は鼻歌を歌いながら、軽い足取りで歩く。

「よく平気だね」

「楽しいじゃない」

 コート姿の日和は明るい笑みを浮かべた。

 わたしが彼女の立場だったら、笑えなさそうだ。

 彼女は鞄に加え、学校指定の補助バッグを持っている。

といっても今日は特別荷物が多いわけでも、体育があるわけでもない。

そこには日和が通っている高校の制服が入っているのだ。

 彼女がコートの下に来ているのはわたしの高校の制服だ。

ただ、冬服は一着しか持っていない。

そのため、彼女は夏服のスカートに長袖のシャツにセーターという十二月にあるまじき格好をしていたのだ。

防寒自体はマフラーとコート、インナーで十分だったのだろう。
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