わたしの意地悪な弟
 日和は得意げに微笑んだ。

 学校の大まかな見取り図は教えたが、何を考えているのだろうかはよくわからない。



 わたしと樹は昇降口に到着して、靴を履きかえる。

 隠れられる場所として、わたしたちは階段を選んだ。

 そして、わたしたちは階段のところで一息つくと、天井を仰いだ。

「本当にあの子なのかな」

「分からない」

 樹は複雑そうだ。

 自分に対する恋心から生じた行動に、少なからず抵抗があるのだろう。

 わたしたち一階の階段の裏で待つことにした。

 そこは物陰になっていて、生徒が早めに登校したとしても話をしなければ姿を見つけられることはないためだ。

 携帯が光り、日和からのメールが届いた。

 しばらくして靴箱の開く音がした。

 再び靴箱が閉まる音がし、足音が聞こえる。だが、急にその足音はとまり、階段に近づいてくることはなかった。

 わたしと樹は目を見合わせ、わたしが荷物を置き、昇降口を伺うことにしたのだ。
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