わたしの意地悪な弟
 樹は短くため息をついた。

 その様子に恵美の表情が引きつる。

「写真をばらまこうが、何しようが、俺は千波以外は好きにならないよ。だから、もうこんなことやめてくれ」

 樹はそううめいた。

 彼女の顔が苦痛にゆがむ。

「あなたたちの両親が知ったらびっくりするんじゃないの?」

「両親にも話をしたし、理解はしてくれた。学校で広まっても構わない。だから言いたいなら言えばいいよ。写真もばらまけばいい。俺が千波を絶対に守るから」

 恵美は樹を睨んだ。

「こんな女のどこがいいのよ」

「全部」

 樹は即答し、笑顔を浮かべた。

 その言葉に彼女の視界が滲んだ。

 わたしは顔が赤くなるが、状況的に照れてばかりはいられない。

「兄弟で恋愛なんて気持ち悪い」

 彼女は吐き捨てるように言う。

 その言葉に、胸が痛んだ。

「あなたの主観的な意見はおいておいて、学校の掲示板に人の写真を貼るあなたもなかなかのものだと思うな」

 その言葉に振り返ると、利香と日和が立っていたのだ。

 恵美は日和たちを睨んだ。
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