わたしの意地悪な弟
「じゃ、行くね」
日和はそういうと歩きかけた。
だが、彼女の足が止まる。
「別にほかの人がどう思おうといいじゃない。二人が堂々としていれば。それにわたしはいつだってお姉ちゃんたちを応援しているもの」
「わたしもね」
利香は日和と目を合わせると、そう付け加えた。
「ありがとう」
日和はじゃあねと言い残し、足早に学校を後にした。
どうやら彼女が校内に入ったのはばれずにすみそうだ。
わたしと利香は樹と別れ、教室に行く。そろそろほかの生徒もぼちぼち登校しはじめる時間だ。
「まだ気にしているの?」
机に鞄を置いたわたしに利香が問いかけた。
「うん。やっぱりおかしいのかなってさ。わたしもずっとそう思ってきたのに、いつの間にか好きになって、両親にも気を遣わせてしまったもの」
「そもそも樹君と千波は血のつながりがないから、気にする必要もないと思うよ。それにおばさん言っていたでしょう。
お互いが幸せになれる人生を見つけられるだろう、と。だから、二人が幸せになればそれでいいんだと思うよ」