社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「……焦りすぎた。悪い」
窓の外を見たまま、私のほうは向いていなかったけれど、ギュッと強く握られた手から彼の私を大切に思う気持ちが感じられた。
その日もそれから今日までも、彼はデートをしても、遅くても日付が変わる時間までに自宅に送り届けてくれていた。
そして先週末、衣川課長は家を訪れて両親にお付き合いの報告をしてくれた。
すでに結婚まで暴走しそうになっている両親が恥ずかしかったが、きちんと段階をふんでくれた衣川課長の真摯な態度に私はますます彼を好きになっていった。
そうしてやっと……今日の日を迎えたのだ。
彼の部屋に泊まるということが、なにをするのかということくらい私にもわかっている。そしてそれなりの覚悟をして今日の日を迎えていた。
それなのにキャンセルになるなんて。
何度目かのため息をついて、IDカードをかざして会社を出た。
なんだかまっすぐに家に帰る気になれなくて、汐里さんと貴和子さんに声をかけてみたけれどふたりとも予定があるみたいで、振られてしまった。
結局ひとりで、仕事終わりの街をブラブラと歩く。最近は時間さえ合えば仕事終わりや休日には衣川課長と会っていることが多かったので、久しぶりにひとりで街を歩くとなんだか新鮮に感じた。
いつまでも落ち込んでいても仕方がない。私は気持ちを切り替え久しぶりの“おひとりさま”を満喫することにした。