社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
食事を終えた私は、コーヒーを飲みながら買ったばかりのレシピ本をめくっていた。

するとテーブルに置いてあったスマホがブルブルと震えだした。

すぐに手を取り、ディスプレイを確認するとそこには“衣川課長”と名前が表示されていた。あわてて画面をタッチして電話に出る。

「もしもし」

『俺だけど……』

電話口からは、車の走り去る音や人の話し声がわずかにきこえてきた。彼が外にいることがわかる。

「接待終わったんですか?」

『あぁ……思ったよりも早く抜け出せた——』

「あの、私。まだ駅前にいるんです。あの……会えますか?」

一度はキャンセルになった今日のデートだったが、接待が終わったのなら会いたい。私は素直な気持ちを彼にぶつけた。

『あぁ。ダメだなんて言うはずないだろう』

彼の嬉しそうな声を聞いて、思わず顔がほころんでしまう。駅で待ち合わせをすることにして電話を切った。

待ちきれずに疼く気持ちが、私を焦らせる。握っていたスマホとそれまで開いていた本をバッグに突っ込み、代わりにお財布を取り出すと、さっさと支払いを済ませ店を飛び出した。

私の方が駅の近くにいるから、急ぐ必要なんてない。けれど、浮ついてしまった気持ちのせいかいてもたってもいられずに、駅へ向かう足取りはいつもの倍くらいのスピードが出ていたように思う。
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