社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「おじゃまします」
会社の最寄り駅から十五分ほど、そこからさらに歩いて五分で衣川課長の自宅マンションに到着した。
先にドアを開けて待ってくれている衣川課長が「どうぞ」と声をかけてくれた。
少し緊張して足を踏み入れる。玄関にはものが少なくシューズボックスの上には、鍵の束だけが置かれていた。
先に歩き始めた衣川課長に続いて、リビングに向かう。入口に立って思わず周りを見渡す。会社においてあるデデスクと同じように、ものが少なく綺麗に整えられた居心地のよい空間だ。
奥に引き戸が見えるので、もう一部屋あるみたいだ。
キョロキョロとみまわしていると「適当に座って。コーヒーでも淹れるから」と声をかけられた。
ジャケットを脱いでキッチンに歩いて行く彼の背中を見て、さっき置き去りにしてしまった紙袋を思い出し彼をおいかけた。
「あの、コレ……」
私が差し出した紙袋を受け取って衣川課長が丁寧に開いた。
「マグカップか」
「はい。今日ブラブラしてたら偶然見つけたんです。思わず衣川課長と私の分を買っちゃんたんですけど」
「いいな。朔乃がここに来た時に使えばいい」
隣に立つ彼を見ると優しい視線を私にむけてくれていた。これから何度も私がここを訪れることを当然のように言ってくれて、胸の中があったかくなる。