社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「うん」
嬉しそうな彼の声が、後ろから聞こえてきた。その声を聞いて私はもう一度彼の名前を呼んだ。
「要さん」
今度ははっきりと、彼の名前を呼ぶ。
「うん。ありがとう朔乃」
柔らかい彼の声が、私の心に届いた。
“衣川課長”と呼んでいたときよりも一気に距離が縮まった感じがする。呼び方ひとつなのに、こんな気持ちになれるなんて新しい発見だ。
「約束通り、降ろしてあげなきゃな」
そう言った彼が私を抱いたまま立ち上がると、ゆっくりとベッドに私を横たえた。
そして覆いかぶさるようにして、私を抱きしめた。
「今から、甘い朔乃を味わうつもりだけど……いい?」
伺うように見つめられた。彼のその顔はいつものクールな彼ではなく、熱い瞳で私を強くみつめる男の人の顔だった。
「はい……」
大好きな彼とだから、私もこうなることを楽しみにしていた。けれど……緊張しているのも確かだ。
そんな私の気持ちを分かってほしくて、彼にお願いした。
「あの……ゆっくりお願いします」
恥ずかしくて、顔が赤くなっているのがわかる。自分の両手で顔を覆って隠そうとしたけれど、要さんはそれを許してくれなかった。
「顔、ちゃんと見せて。ゆっくり愛させて」
彼の言葉が耳に届いた瞬間……唇にキスが落とされた。
甘い夜が始まる予感に私はそっと目を閉じた。