社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~


気持ちのいい微睡の中、なにかが頬に触れる感触でうっすらと目をあけた。

要さんの柔らかい笑顔が間近にあって、驚いて目を見開いた。

「目、覚めた?」

少し掠れた声で聞かれた私は、コクンと頷くことしかできなかった。——つい先ほどのことを鮮明に思い出してしまったからだ。

そんな私に構うことなく、彼の指が私の髪の中に差し入れられた。ゆっくりと梳かれてそれがすごく気持いい。思わず目を細めてしまう。

ふと彼の後ろの壁かけ時計に目が行く。それは六時を示していた。

「えっ! もう朝なんですか?」

まだ寝ぼけているのかと思い、目をこすりもう一度時計を見たがやっぱり六時だ。

「そうだな。すごく気持よさそうに眠ってた」

と、言うことは寝顔を見られていたということだ。さっきも、私が目を開けた時に要さんはすでに、起きていた。

「す、すみません。なんだか、もう……」

せっかくはじめて結ばれた日なのに、すっかり眠りこけてしまうなんて。

身の置き所がなくて、うつ伏せになって自分を彼から隠した。

そんな私を笑う小さな声が聞こえてきたあと、ギシリとベッドが鳴った。

「コーヒー淹れてくる。結局昨日は飲めなかったからな」

そうだ。昨日はキッチンからそのまま……あぁ、また思い出してしまった。

顔を伏せたまま頷いた私は、まだ彼に顔を見られる勇気がない。

「とりあえず、コレ着といて」

顔をあげて、確認すると昨日彼が身に着けていたシャツだった。手にとると大好きな彼の香りがして、顔がほころぶ。

って、ちょっと変態チックじゃない?
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