社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「……そう。それで様子が変だったのね」
落ち着いて話を聞いてくれている貴和子さんとは対照的で、汐里さんは手に持ったフォークを握り締めたまま目を丸くしている。
「あの、いや……なんでまた、衣川課長なの? まさか送られ狼事件のときに?」
確かに決定的に恋心を意識したのはあのときだ。私は苦笑いを浮かべて頷いた。
「なんにも相談しなくてすみませんでした」
「別に、そんなことはどうでもいいのよ。話したくなったら話してくれればいいなぁと思って今日は誘ったけど、相談うんぬんよりも河原さんに少しでも元気になってほしかったの」
貴和子さんの言葉に汐里さんもうんうんと頷く。
「これでも結構立ち直ったんですよ。時間が解決って言葉って本当だったんですね」
滲んだ涙をハンカチで拭って笑顔を向けたけれど、ふたりの視線は私を心配している。
「別に無理しなくてもいいよ。つらいならつらいって言えばいいのに。最近の朔ちゃん痛々しいよ」
痛々しいか……汐里さん、ちゃんと見てるんだな。
「無理矢理笑って、仕事詰め込んで。つらいのはわかるけどそんな風にしてほしくない。気分転換ならいくらでも付き合うから、私たちを頼ってほしかったな」
「汐里さん……」
止まりかけていた涙がまたにじむ。もう我慢できそうにない。
隣から貴和子さんの手が伸びてきて、優しく背中をさすってくれた。それと同時にポロリと涙があふれた。