社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「ふっ……う」
久しぶりに声を上げて泣いてしまう。あれから泣くと衣川課長のことしか考えられなくなるのが怖くて、泣くのも我慢していた。
しゃくりあげて泣く私の背中を貴和子さんはさすり続けてくれた。暖かい手が涙を余計に誘う。
私が泣いている間、ふたりはなにも言わずにずっとつきあってくれた。ひとしきり泣き終わると、ビショビショになった私のハンカチを見た汐里さんが、自分のハンカチを差し出してくれた。しかし、それも濡れていて、よく見ると彼女の鼻の頭は赤く目は潤んでいる。
「ちょっと、濡れてるのは我慢してね」
「っ……はい」
こうやって、私の気持ちに共感して泣いてくれる人がいる。心配して背中をさすってくれている人もいる。恋で膨らんでいた体の中が空っぽのような気がしていたけれど、こんなにも自分のことを思ってくれる人がいることに気がついた。
「本当に、ありがとうございます。私、なんか今、すごく幸せです」
「失恋したのに?」
汐里さんが呆れたように声をかける。
「はい。それでも、やっぱり私は幸せだと思います」