社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「じゃあ、もう一回乾杯しよう」
三人でグラスを持ち、カチンと合わせた。
それから私たちは、よく飲んでよく食べた。みるみるうちに、牡蠣の殻が積まれていく。ブルスケッタや牡蠣のオイルパスタを平らげても汐里さんはまだなにかを注文しようとしていて、それを私と貴和子さんで止めた。
そこで、私は大事なことを思い出してふたりに向き直った。
「貴和子さん……ごめんなさい」
「なに、一体どうしたのよ?」
いきなりの私の真剣な謝罪に、貴和子さんは笑っていた。
「実は、私……嫉妬してました」
「嫉妬? 私に?」
理解ができないようで、きょとんとした顔をしている。
「実は、衣川課長に彼女がいないのは忘れない人がいるからだろうって思って」
「あ、それ、私が言ったから? ホモか、忘れらない人がいるって」
汐里さんとの会話を思い出したようだ。私は頷いて話を続けた。
「それで、営業二課の合田さんが貴和子さんと衣川課長が付き合ってたって言ってて……私、勝手に嫉妬して……」
「ちょ、ちょっと待ってよ。まだそんな噂信じてる人がいるの?」
「えっ? じゃあ違うんですか?」
「私、衣川くんとは一度も付き合ったことないわよ。完全なる同期。プライベートになんてまるで興味ないから」
「そんな……じゃあ、どうして」
「そうですよ、火のないところに煙は立たないって言うじゃないですか」
汐里さんの言葉に私も頷いて同調する。