社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
頬にも熱がこもっているし、きっとみっともないほど赤い顔をしているに違いない。

咄嗟に両手で顔を隠そうとしたが、その手を成瀬が掴む。

「ちょっと……見ないで、こんな顔」

涙で化粧はメチャクチャだろうし、キスされて赤くなった顔はもっとみられたくない。

「隠すな……っていうか、行くぞ」

「待って、どこに行くの?」

キスの衝撃でうまく頭が回らない。

そんな私の言葉など聞く耳を持たずに、私の手を掴んだまま歩き出す。

「俺の部屋」

「え、なに言ってるの? ……どういうつもり」

足を止めずに歩き続ける成瀬の背中に言葉をぶつけたが、答えは返ってこない。

大通りに出ると、すぐにタクシーを止めようと手をあげる。

その間も「逃がさない」とでも言うように、私の手をがっちりと握りしめていた。

「私、成瀬の部屋に行くだなんて、言ってないよ」

「別にお前の返事なんて、最初から聞くつもりなんてないし」

そのセリフを聞いて、私は彼に握られていた腕を振りほどいた。

「勝手なこと言わないでっ! どうして私が……」

「逃がさないからな。今日は絶対に」

成瀬がもう一度私の腕を取ると同時に、ふたりの前にタクシーが止まった。

「乗って」

いつもの、チャラい成瀬じゃない。

真剣な眼差しでそう言われて、私はそれに従うしかなかった。
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