社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
成瀬に押し込まれるようにして乗ったタクシーの中では、腕は解放されたがその代わりなのか、いつかのように手をギュッと握られた。

ふたりなにも会話もせずに、成瀬はずっと窓の外を眺めたままだ。

私は、彼の視線を追うように、成瀬越しに窓の外を眺めた。彼と同じ景色を見てはいたけれど、これからふたりで成瀬の部屋に行ってどうするのか私にはわからなかった。

——いや、わからないふりをしていた。

そんな私の気持ちなんか知らない成瀬は「お前の手、やっぱり冷たいな」といつかと同じように一言つぶやいて、また黙り込んでしまった。
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