社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「ほら、早く入って」

玄関にはスニーカーとサンダルが並んで置いてあった。成瀬が脱いだ靴の隣に自分のヒールを並べると「お邪魔します」と声をかけて、先に中に入ってしまった成瀬を追いかけた。

リビングへ足を踏み入れた私に「座って」と声をかけてた成瀬はキッチンに向かう。

言われた通りに、ソファに座ると否が応でも部屋の中が目に入ってきてしまう。

成瀬のいつも散らかっているデスクと似たような感じで、ごちゃごちゃとした感じが否めない。テレビの周りには
ゲーム機やダンベルなんかも置いてあって、男の人の部屋だと感じた。

そしてその中だからこそ、余計に目立つものを発見してしまう。……女性用のファッション雑誌だ。

こういうの見たくなかったのに。

目をそらしても、今見た光景が消える訳じゃない。けれど私はそれをまともに見ることができなかった。

実際にこの部屋に女性がいたのを目撃しているんだから、こういうものもあるのは仕方がない。けれど現実に突きつけられるとやっぱり気持ちが沈んでしまう。

私が悶々としていると、目の前にマグカップが差し出された。

中にはミルク入りのコーヒーが入っている。

ハッとして顔をあげた。

「ありがとう」

立ったままの成瀬を見上げて、受け取りながらお礼を言う。

マグカップを両手で持つと、暖かくて荒れた気持ちがすこし落ち着いた。

「飲んで。ミルク入りの砂糖なしにしてある」

私の好み知っていたんだ。

つき合いが長いので当たり前なのかもしれない。けれどそんな小さなことでも嬉しい。
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