社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~

「ちょっと! どうして目覚ましかけてなかったのよ。おかげで昨日と同じ服で出勤しないといけないじゃない」

「なんだよ、お前だって気持ちよさそうに、俺に体くっつけて眠ってただろ?」

「ぎゃーーー! 朝からなんてこと言うの? セクハラ、変態!」

「なに言ってんだ、彼女にセクハラしてなにが悪い」

翌朝私たちは、駅から会社までの道を人波をよけながらほぼ駆け足ともいえる早足で歩いていた。

昨日幸せな時間を二人で過ごしたあと、甘い眠りについた。成瀬の体温が心地よくて心も体も満たされた。

しかし、成瀬の「あーーーー!」と言う大音量の声で私の甘い時間が終わり、慌ててふためいでアパートを飛び出し今に至る。

「もう、どうしよう。昨日と同じスーツなんて、勘ぐられたらどうしよう」

気にしない人は気にしないだろう。けれどうちの顔には噂好きの合田さんがいる。彼女に根掘り葉掘り聞かれると思うと、想像するだけで憂鬱だ。うまくごまかす自信がない。

そんなことを考えながら歩いていると、隣からグイッと腕を引かれた。

はっとするとすぐ横を自転車がすり抜けていく。

「あぶねーな。お前もぼーっとするな」

「あ、うん。ありがとう」

素直にお礼を言い、成瀬の顔を見る。視線がからみ、ふたりの間に言いようのない空気が流れた。
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