社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「ちょっと、鍵がないと入れないでしょ?」

「あ? だからなんだよ鍵って……」

ダメだ埒が明かない。

「ちょっとゴメン」

一応断って、成瀬のスーツのポケットを探っていく。しかし外のポケットには携帯しか入ってない。

内ポケットに手を伸ばして、探ろうとすると「おい、やめろってば」とくすぐったそうに笑い始めた。

無邪気に体を揺すって笑っているのを見て、ため息をついて酔っ払い相手にちゃんと説明をする。

「いや、いや。鍵見つけないと困るでしょ?」

私がもう一度手を突っ込んで内ポケットを探ろうとすると、身をよじって抵抗する。

「ちょっと、じっとしててよ」

「あはは……やめろよ、お前……うわっ!」

「きゃぁ」

バランスを崩した成瀬を支えきれずに、尻もちをついてしまう。

「あれ、わりぃ」

「悪いと思ってるなら、早くどいてよっ!」

私の焦りとは裏腹に、成瀬はギュッと私を抱きしめてきた。

「お前、あったかいな。それになんかいい匂いがする」

なにを思ったのか、成瀬はそのまま私の胸に顔をうずめた。

「あぁ、思ってたより柔らかい……」

「な、な、なにやってんのよー!」

「いってー!」

私が思い切り突き飛ばすと、成瀬は自宅の扉にドンッとぶつかった。

「変態!」
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